羊の群れが通る村

セゴビアのグルメの筆頭によく挙げられるのは「コチニージョ・アサード(乳飲み子豚の丸焼き)」ですが、実のところ地元の人々にとってよりなじみが深いのは「コルデロ・アサード(仔羊のロースト)」ではないかと思います。

羊とセゴビアの深い関係、について少し記してみます。

移牧の歴史と羊毛業

イベリア半島における羊の移牧(トラシュマンシア)の歴史は、はるか前ローマ時代までさかのぼります。13世紀には、賢王アルフォンソ10世により、何本もの移牧ルートがスペイン全土で定められました。

主要な10本の移牧ルートのうち、セゴビア県を通るものは2本あり、中でもソリア県からバダホス県までをつなぐ西ソリアルートは非常に重要でした。

羊の通り道だったセゴビアは、羊毛業によって13世紀頃に急速な経済的成長を遂げます。毛織物産業は、16世紀頃まで続くセゴビアの絶頂期を支えた重要な要素のひとつでした。

カランコロンとやってくる

そんな歴史はさておき、ふと窓の外を見ると。

羊飼いに連れられた羊の群れ

春から冬にかけ、羊の群れがこんな風に村をよく通ります。何頭かは首に鈴をつけていて、カランコロンと音がするので、家の中にいても通るのがわかります。

これは前述の「移牧ルート」という規模の半島内移動をしているわけではなく、羊のオーナーが羊飼いに羊を託して、近隣の村を移動させているものです。

今年は特に早く来ました(昨日3月25日が今年初)が、去年は7月半ばまでわが村には来ませんでした。春を過ぎても羊たちが来ないと、野原の草がぼうぼうに伸び、散歩もままならなくなります。

羊さんたちはひたすら草を食べ、そのままそこにコロコロの置き土産!をしていきますので、それが後々草原の肥料にもなるわけで、よくできたシステムです。(置き土産は踏んでもつぶれない固さ・小ささなので、その後の散歩には問題ありません!)

羊飼いという仕事

群れを連れた羊飼いは、群れを制御する犬を何頭か連れているのが常です。朝から夕方まで、草のある場所を移動しながら歩き続け、夜は広い場所に作った囲いの中へ羊を誘導し、囲いを閉めると車やバイクで家まで帰っていきます。そしてまた翌朝、そこへやってきて羊たちを連れ出し、歩き始めます。

これは過酷な仕事です。天気の良い、過ごしやすい日ならいざ知らず、寒い日、雨や雪の日、逆に暑い日でも、一日中ずっと平原を歩き続けるわけで、誰にでもできる仕事ではありません。

犬が見張っていても、時々群れからはぐれる羊もいますし、途中で病気や怪我で歩けなくなる羊を見かけることもあります。たくさんの羊をオーナーから預かって、常にまとめながら動くのはそれなりに気を遣うのではと思います。

残ってほしい風景

そんな羊飼いという仕事、定年を迎える人が多い中、若い人のなり手は少なく、数が減ってきているそうです。

それも時代の流れ、仕方のないことではありますが、こんな心和む風景がいつまでも残ってほしいと思うのもまた事実です。

羊の群れが道路を渡る時、通りかかった車は必ず、群れがすべて渡り終わるのを待ちます。そんなのどかな時間の流れも、まだこのあたりには残っています。

おっとりしているようで実は動きの速い羊たち